水道水に溶け出す可能性のある有害物質のひとつに、鉛(なまり)があります。
鉛は人体に蓄積されやすいため、摂取量を低くおさえることが重要です。
今回は、日本の水道水にも含まれる可能性のある溶解性鉛の毒性や、日常におけるお水の注意点について解説します。
鉛中毒とは?
人間をはじめとした生物に対して、鉛は蓄積性があります。急性中毒も慢性中毒も見られます。
厚生労働省は、血中鉛濃度が高まった場合の毒性に関して、以下7つの影響をまとめています。
鉛の毒性
- 急性毒性(致死的な影響)
- 血液毒性(ヘモグロビン合成の減少)
- 知能/行動学的影響(IQの低下や問題行動の出現)
- 神経毒性(運動機能障害や認知機能等への影響)
- 腎毒性(腎疾患リスク)
- 生殖発生毒性(早産や胎児の生育への影響)
- 発がん性
※厚生労働省のこちらの資料(PDF)に、内容がわかりやすくまとめられています。
鉛の発がん性については、国際がん研究機関(IARC)においても、ヒトにおいて発がんの可能性のある物質(グループ2B)に分類されています。
注意すべき初期症状について
鉛中毒の初期症状は貧血です。ほかにも便秘や下痢などの消化器障害や、中枢神経障害、腎障害の症状が見られる傾向にあります。
鉛中毒の疑いのある方は、すみやかに医療機関を受診しましょう。
子どもの鉛暴露は大人の4〜5倍危険
乳幼児や胎児(妊婦)の鉛暴露は、とくに注意を要します。
米国疾患管理センター(CDC/Centers for Disease Control and Prevention)の報告によると、小児の血中鉛濃度が10 µg/dL以上になると、知能指数(IQ)が低下したり、問題行動が出現したりすることが確認されています。
成人と比較すると、幼児や小児は4~5倍ほど鉛の吸収率が高いという報告もあります。
消化管から鉛を吸収する場合、成人は食事中の鉛の約10%を吸収しますが、幼児や小児は、食事中の鉛の約50%を体内に吸収することがわかっています。
国際的にはどのようにリスク評価されているのか?
国際的なリスク評価機関であるJECFA(FAO・WHO合同食品添加物専門家会議)は、1986年以来、鉛の耐容摂取量(摂取量が一定以下であれば健康への悪影響はないと考えられる量)を、25 µg/kg 体重/週と設定してきました。
ただし現在、この数字は撤廃されています。2010年に実施された第73回JECFAにおいて、ごく少量であっても、鉛の摂取は人体に悪影響があることが確認されました。
現在は、耐容摂取量を設定すること自体が不適切とされています。日常生活において鉛の摂取量をできるかぎり低く維持することが重要です。
世界保健機関(WHO)の飲料水ガイドラインにおける鉛濃度
WHOは、飲料水の水質ガイドライン(GDWQ)を作成している国際機関です。
考慮するべき化学的危険性のある物質のひとつとして鉛をあげています。飲料水中の鉛濃度のガイドライン値は0.01 mg/Lです。
なぜ日本の水道水に鉛の危険性があるのか?
日本の水道は創設以来、120年以上が経過しています。鉛はやわらかく金属加工しやすいことから、昔から水道管の製造原料として長らく利用されてきました。
鉛の毒性などが明らかになるにつれ、1990年代初頭から製造は控えられるようになり、現在は各自治体や水道事業体によって鉛製給水管の交換が進められています。
鉛製給水管の残存状況
いまだ基準値を超える溶解性鉛の報告が少なくないことから、鉛製の古い給水管は、日本各地に残存していると考えられています。
厚生労働省健康局水道課が実施した平成19年の水道事業者向けのアンケート調査によると、鉛製給水管について「残存あり」と応えた水道事業者は、1,508中612(全体の40%)にのぼりました。その際の残存給水件数は5,211,352 件です。
給水管を入れ替えて鉛対策
鉛製給水管の交換が進められているとはいえ、水道局などの水道事業体が管理対象としている範囲は、宅地内の水道メーターが設置されている箇所(家の敷地にはいるところ)までに限られます。
水道メーター以降の宅地内の配管については、居住者自身が費用負担し、給水管の入れ替えを実施しなければなりません。
築古の住宅は鉛製給水管が残存している可能性が高い
築年数の古い住宅にお住まいの方は、古い配水管が残存している恐れがあるため、とくに注意する必要があります。
たとえばビンテージマンションなどの集合住宅では、すべての配管を入れ替えることは困難であるため、鉛製給水管が放置されている可能性が比較的高くなります。
布設替えには、一般的に多額の経費がかかります。一部地域には助成も用意されているので、お住まいの自治体の助成状況を確認してみましょう。
鉛製給水管布設替えの方法
まずは厚生労働省が発行している「鉛製給水管布設替え手引き」(PDF)をダウンロードして、内容を確認しましょう。
手引き内にある対応を取ることで、給水栓における鉛の悪影響を取り除くことができます。
配水管の入れ替えには費用も時間もかかるため、前もって余裕のある計画を立てておくことをおすすめします。
日常でできる鉛対策のポイント
給水管のなかに水道水が滞留する時間が長くなると、鉛が水に溶け出し、水中濃度が高くなることがわかっています。
長期不在後に水道水を使用する際には、より多くの鉛が溶け出している可能性があるため、水栓から5分ほど水を流しっぱなしにしてから、お水を使うとよいでしょう。
また、家に入ってくる前の配管の形状が、水を滞留させやすい形をしているケースもあります。この場合、水栓に浄水器を設置することで、安全な水道水を手に入れることができます。
溶解性鉛に対応した浄水器の選び方
溶解性鉛は性質上、水に溶けやすいため、浄水器の性能比較においては細心の注意をはらう必要があります。
鉛に対応していることを謳う製品は多くありますが、その試験方法や評価基準のレベルは、製品によりけりです。
なお、国内製の浄水器のほとんどは、JIS規格(日本工業規格)のJIS S 3201という家庭用浄水器の試験方法が採られているでしょう。
溶解性鉛に関するJISとNSFの違い
通常、浄水器の性能テストには、人工的に作った「試験水」が用いられます。
テスト用に、鉛などの有害物質を含んだ試験水を作り、対象機種に実際に流しこむことで、対象物質の除去項目数や除去率を把握します。
日本のJIS S 3201の試験方法と、国際認証基準NSFの試験方法との間にあるもっとも大きな違いは、鉛の場合、この試験水の質にあります。
①国際基準NSFは、JIS規格の3倍の濃度でテスト
たとえばJIS規格では、鉛の濃度を「0.05mg/L」に調整してから試験が行われています。
一方NSFでは、JIS規格の3倍の濃度である「0.15mg/L」の試験水で性能テストを実施しています。
なぜ試験水の濃度に3倍もの差が生まれているのか?
JIS規格の評価基準では、除去率は80%と定められています。
日本で守らなければならない飲料水質基準における鉛濃度は「0.01mg/L」であるため、除去率80%の場合には、「0.05mg/L」までならOKであるという計算によって、試験水濃度が定められています。
一方、 NSFでは、過去に実際に水道水から検出されたことのある事実上の数値を考慮して、試験水濃度を決定します。
頭から除去率を決め打ちにしないため、結果としてJIS規格の3倍の濃度である「0.15mg/L」の試験水となっています。
②JIS規格には試験水のPH要件が存在しない
鉛は性質上、PHによって溶出される濃度が変わり、浄水性能に影響を及ぼすことが判明しています。
NSFの認証試験では、PH6.5(酸性)およびPH8.5(アルカリ性)のそれぞれにおいてテストするため、地域や季節の変化といった環境の違いにも対応した評価基準が構成されています。
一方、JIS規格には、試験水に対するPHの要件はありません。
マルチピュアは鉛の除去率「99.3%以上」
マルチピュアの浄水器は、すべてのモデルが溶解性鉛に対応しており、NSF認証において99.3%以上の除去率が認められています。
そのほか試験認定されている除去項目や除去率は、こちらからご閲覧いただけます。
マルチピュアは「世界最多」の認証を受けています
ウイルス・バクテリア・ヒ素をも除去できるマルチピュアの最上位機種Aquaextra(アクアエクストラ)シリーズは、世界で唯一のウイルス除去フィルターとしてNSF認証を取得しています。
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