家庭用浄水器にはさまざまな種類があり、キッチンに設置する一般的なタイプだけでなく、「セントラル浄水器」「オール浄水器」といった名称で呼ばれる元付け型の浄水器もあります。
元付け型の浄水器は、家全体のお水を一元的に浄水にすることができます。一見、万能そうに思えるかもしれませんが、重大な欠点や課題もあります。導入前にはメリットとデメリットをよく確認してから検討しましょう。
セントラル浄水器(オール浄水器)とは?
セントラル浄水器とは、水道の元栓付近に浄水器を設置し、家のなかで使用するすべての水を一括して浄水に変えるしくみ、もしくはその機器を指します。
どの水栓から出てくる水も、もれなく浄水になります。キッチンやお風呂はもちろん、洗濯機も食器洗浄機も、トイレの水すら、浄水に変わります。
弊社が日本でセントラル浄水器を販売しない理由
マルチピュアジャパンでは、日本の水道環境においてセントラル浄水器を導入する場合のデメリットを考慮し、販売を見送っております。
もちろん米国本社には、セントラル浄水器のモデル販売がありますし、マルチピュアジャパンでも東南アジア向けには、むしろ導入をおすすめしております。
セントラル浄水器には、メリットもあればデメリットもあります。デメリットがメリットを上回ることが推測される際には、利用のおすすめはできません。
モデルはあるのに、なぜ、日本のお客様には販売しないのか。マルチピュアジャパンの懸念しているセントラル浄水器の課題についてお話します。
セントラル浄水器の基本的な特徴(水流について)
まず基礎知識として、水流についての話をします。
生活水には、瞬間的な流量が必要となる場面が多数あります。たとえば日常のシャワー、洗濯、トイレなどには、短時間で大量の水を流すことが求められます。
具体的には、家全体でストレスなく水を利用するには1分間あたり30~50リットル程度の水量が必要です。
浄水器を設置すると瞬間的な流量が減る
一方、浄水器を設置すると、1分間あたりに流せる水量は減少します。
フィルターを通過させてから水を出すしくみのため、不純物の除去項目数や除去率の高い浄水器であるほど、水を流すときの抵抗は大きくなります。
有害物質の多くを除去するには、フィルターの密度を高めなくてはなりません。そのぶんだけ瞬間的に出せる水量は少なくなるというわけです。
セントラル浄水器の浄水性能は低い
そのためセントラル浄水器の浄水性能は、一般的に低く設定されています。
もしも、密度を高くしたフィルターを使ってしまえば、日常生活で必要となる水量を確保できなくなるでしょう。お風呂を沸かすのに一時間以上かかったり、シャワーを浴びている最中にトイレの水が流れなくなったりなど、生活上の悪影響が懸念されます。
どのメーカーも元付け浄水器には、密度の高いフィルターを設置することができていないのが現状となります。
浄水性能は低くても設置のメリットはある
たとえば東南アジアのように、水道水質に課題のある地域では、セントラル浄水器の導入効果を実感しやすいでしょう。
現地では、洗濯機を稼働させるたびに、服が黄ばんだり赤くなったり、はたまた黒くなったりします。このように水質の安定していない場合には、セントラル浄水器を導入することで、生活水に対する不安を一掃することが可能です。
実際にマルチピュアジャパンでも、ジャカルタを中心としたインドネシア向けにモデル開発を行い、セントラル浄水器を販売しております。
日本のように上下水道が整えられている環境ではメリットを実感しにくいかもしれませんが、セントラル浄水器があるからこそ、安心して暮らせるようになる地域もあります。お住まいの場所によっては、ぜひ導入を検討してみましょう。
セントラル浄水器を導入するデメリット
あえて日本の水道水に対して「セントラル浄水器」や「オール浄水器」と呼ばれているものを導入する場合、以下のデメリットを事前に把握しておくとよいでしょう。
注意すべきポイントを、よく見受けられる4つの項目にしぼりました。ひとつずつ解説します。
問題点1.無塩素になる
日本の水道水には、良くも悪くも塩素が含まれています。具体的には、各家庭の末端の蛇口から0.1mg/ℓ以上の塩素が残るように調整されています(水道法)。
浄水場を出てから数十キロ離れた場所まで移動してきても、水道管内の水は塩素によって殺菌されているため、各家庭に届いた際に、目も当てられないほど雑菌が繁殖していることはありません。
セントラル浄水器の弊害
水道水に含まれている塩素を元栓付近から除去してしまった場合、家庭内の配管には、塩素の入っていない水が溜まることになります。
無塩素状態になると、水中で細菌が繁殖しやすくなります。むしろ健康被害が懸念されるため、厚生労働省からは注意喚起がなされています。
実際にあった無塩素事件
日本でも、全住戸にセントラル浄水器を設置したマンションで、問題が発生したことがあります。
複数の住戸から「シャワーの水が出なくなった」という苦情が殺到したため、管理会社が内部を点検したところ、シャワーの散水板の内側にバイオフィルム(ねっとりとした細菌の集合体)が溜まっていることがわかりました。
その後のさらなる調査によって、水が流れなくなるほどのバイオフィルムが配管全体にわたり発生していることが判明し、オゾン殺菌や高圧洗浄などが施されました。
徹底して解消されるまでに長い月日と多額の費用がかかった事例です。セントラル浄水器を導入する際には、あらかじめ無塩素問題に対処しておくことが求められます。
問題点2.加湿器などの機器を使えなくなる
加湿器など、水を汲んで利用する機器の使用においても、注意が必要です。
塩素を取り除いた水道水が長時間滞留すると、機器のなかで細菌が繁殖しやすくなります。
加湿器の場合には、加湿蒸気とともに雑菌が空気中にくりかえし噴霧されるため、呼吸器疾患などを助長する恐れがあります。お子様のいる家庭や、妊娠中の方、ご年配の方と同居されている家庭は、とくに注意が必要です。
加湿器メーカーは浄水の使用を禁止している
そのため、加湿器メーカーの多くは、機器に対する浄水の使用を禁止しています。
しかし、家全体の水がすべからく浄水になっている場合、無塩素ではない水道水を取得することが、むしろ困難になります。
暮らしにおいて、加湿器などの機器の使用を断念せざるを得なくなる可能性があることを、押さえておきましょう。
問題点3.ビルトイン食器洗い乾燥機を使えなくなる
加湿器の場合と同じ理由から、食洗器メーカー各社も元付式浄水器の使用を禁止しています。
ためしに三菱電機のウェブサイトを確認してみると、「給水される水が細菌などに汚染される(バクテリアが繁殖)おそれが」あり、「バクテリアが繁殖すると、給水フィルターが目詰まりして、給水できなくなるおそれが」あるため、元付け型の浄水器との接続を禁止しています。
仮に、食器洗い乾燥機とセントラル浄水器を併用し、不具合が発生した場合、保証期間内でも保証対象外となります。
問題点4.自然冷媒ヒートポンプ給湯機を使用できない
エコキュートなどの自然冷媒型の給湯器においても、セントラル浄水器の使用は推奨されません。
たとえばパナソニックのウェブサイトを確認してみると、「必ず水道法に定められた飲料水の水質基準に適合した水をご使用ください」との表記があります。
ビルトイン食洗機の場合と同じく、同社でも、「水質に起因する不具合等が発生した場合、無料保証は致しかねます」と、セントラル浄水器を併用した場合のトラブルについては保証の対象外となります。
元付け型浄水器の衛生管理に対する注意喚起(厚生労働省)
厚生労働省からは、水道局などの水道事業者へ注意喚起が実施されています。
元付浄水器を使用すると、家屋内に給水される水の細菌汚染が懸念されます。そのため、衛生検査などの措置が必要であることが、水道事業者に通達されています。
詳しく確認されたい方は、こちら(PDF)をご覧ください。
まとめ
以上の理由から、マルチピュアジャパンでは日本でのセントラル浄水器の導入を推奨しておらず、モデルはありますが、自社販売しておりません。
お客様には、キッチンやシャワーの水栓に対して個別に取り付ける高機能浄水器をおすすめしております。
最大で104項目もの有害物質や不純物を取り除くことのできる浄水器です。マルチピュアの浄水器は、国際認証機関NSFによって性能が認められています(除去できる有害物質の一覧はこちら)。
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